個人民事再生についてのQ&A
個人再生の条件について
Q一部の債権者から給与を差し押さえられましたが…
A早く個人再生をする必要があります(最低弁済金が増える可能性があります)。
債権者が債務名義(※強制執行する債権の範囲を定めたもの。訴訟の確定判決が最も多いでしょう)を取って強制執行を行うことは、一般によく行われることです。
そして、給与が差し押さえられた(※強制執行の中でも債権執行と呼ばれます)という方も多いのではないでしょうか?
このような場合、毎月、賞与を含む給与手取り額の4分の1(44万円を超える場合は33万円を引いた金額)を債権者に強制的に支払われることになります。
問題は、このまま強制執行が続いてしまった場合の個人再生申立てです。
結論から申しますと、大阪地方裁判所では、原則として、強制執行で支払った金額は偏頗弁済(偏頗弁済についてはこちら)として扱うことになっております。
自己破産においても、給与の差押等で債権者が取り立てた場合、偏頗弁済として否認される場合があります。具体的には、弁護士・司法書士などが介入後(受任通知発送後)、破産申立1年前までに債権者が支払等を受けた場合は、否認の対象になる可能性が大きくなります(破産法166条参照)。
そこで、大阪地方裁判所第6民事部では、個人再生の場合も、これに準じて、再生手続きの申し立て前1年以内の強制執行による取り立てによって実際に債権者が支払いを受けた金額は、偏頗弁済として扱い、実務上は、財産目録に偏頗弁済を加えて清算価値(清算価値についてはこちらを参照)を評価し、最低弁済金額の算定するようにされております。
ただ、借金を負われ、個人再生を申し立てようにも中々難しい場合も多いことがある実情から、強制執行で債権者に支払われた金額から20万円は控除する取扱いになっております。
※最低弁済金の計算方法については個人再生Q&A「借金は、再生計画ではどのようになるんですか?」を参照。
一例を挙げてみましょう。
借金総額 | 全債権額=550万円 |
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財産目録上の金額 | 預金通帳の金額160万円+現金20万円-99万円(※自己破産の場合に認められる自由財産拡張の最大金額)=81万円
クルマの実勢価格25万円 合計106万円 |
強制執行の弁済額 | ※執行が行われ、実際に弁済された期間を4か月とした場合。
月額給与37万円÷4×4か月=37万円 ボーナス40万円÷4=10万円 合計47万円 |
清算価値 | 財産目録上の金額+(強制執行の弁済額-20万円)=133万円 |
最低弁済額 | 原則;借金の5分の1=110万円
例外;上記の金額を清算価値が上回る場合は、清算価値を最低弁済金額とする。 よって、133万円 |
このように、給与から借金を強制的に支払ったにも関わらず、最低弁済金額が増額されるという事態もありえることになります。
特に、既に支払いが滞っている状態の方は、強制執行の可能性が高くなっていると言えます。
債権者も、そのまま放っておくわけにはいかないので、訴訟提起をせざるを得なくなるからです。
個人再生をお考えの方は、速やかに手続きに向けて行動を開始する必要があります。
また、実際に強制執行を受けている方は、すぐに専門家へご相談下さいませ。